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対談企画

町工場の技術と人情が支えた、
風力発電スタートアップの挑戦

人情の提供者
金岡 裕之さん

株式会社浜野製作所
専務取締役

人情の体験者
清水 敦史さん

株式会社チャレナジー
代表取締役CEO

対談企画

町工場の技術と人情が支えた、
風力発電スタートアップの挑戦

体験者の声
人情の提供者
金岡 裕之さん

株式会社浜野製作所
専務取締役

人情の体験者
清水 敦史さん

株式会社チャレナジー
代表取締役CEO

台風でも発電できる可能性を秘めた「垂直軸型マグナス式風力発電機」を開発する株式会社チャレナジー。経済産業省のJ-Startupにも選出されたこのスタートアップ企業は、墨田区「モノヅクリ・オン・デマンド」の拠点の一つGarage Sumidaで創業し、現在はCOG (センターオブガレージ) で開発を進めています。その開発を支えてきたのが、墨田区で40年以上の歴史を持ち、Garage Sumidaを立ち上げた浜野製作所。そこには「人情」が支えたものづくりエピソードがありました。

■浜野製作所のGarage Sumidaは、どういった経緯で生まれたのしょうか。

金岡さん:
浜野製作所はもともとプレス加工とプレス金型の製作を行っていました。でも2000年に火事がおきて、本社が全焼してしまったんです。そのとき、なんとか立て直さなければと、業種業界、企業も個人も分け隔てなく、来るもの拒まずで仕事をするようになったんです。個人からの仕事なんてその場で「はい、現金5000円ね」とか。そんなことをやっているうちに、意外とものを作りたいけど自分じゃつくれない人が多いことがわかってきて。「実は、大学の研究室でこういうこと困っているんだ」なんて話も入ってくるようになりました。こちらから「ベンチャー支援します」と言っていたわけではないんですが、周りの困っている方が話を嗅ぎつけてきて「ちょっと作れない?」って相談に来るようになって。Garage Sumidaはそんなところから始まりました。

■チャレナジーの風力発電への挑戦は、どういったきっかけで?

清水さん:
きっかけは、2011年の震災でした。当時は大阪の大手企業でエンジニアをしていたんですが、原発事故から再生可能エネルギーへの転換に関心をもちました。最初は本当に素人だったので、入門本を買うところから始まったんですよ。再生可能エネルギーって日本だと太陽光のイメージが強いんですけど、世界的にみると風力の方が主流で。風力発電ならメカだから、CADでの設計など、自分のスキルを活かせるんじゃないかと思って。

日本は、プロペラ式風力発電には厳しい環境だと言われていて、その原因の代表例が台風。風力発電が盛んなヨーロッパは台風がないので、プロペラ式風力発電が使える環境が多い。でも、風の資源量でいうと、日本はすごく可能性を秘めていると分かり、挑戦のしがいを感じたわけです。僕が出した結論は、プロペラそのものがプロペラ式風力発電の弱点だってこと。それで、プロペラのない扇風機のように、プロペラのない風力発電機をつくれないものかと考えました。

まずは、片っぱしから風力発電に関する特許を読みました。実は、垂直マグナス風車の特許は既に世界中で出願されていたんです。でも誰も実用化できていなかった。それで、2011年の4月に新しい一つのアイディアを思いつき、おもちゃみたいな模型をつくって、見よう見まねで特許を出願したところ、2013年に特許がとれた。そこから、もう後先考えずに、起業してこの風車に人生を賭けてみようと思ったわけです。

■そこから、どのようにGarage Sumidaと出会ったのでしょうか?

清水さん:
2013年の夏に、会社を辞めて東京に出てきました。全くアテも無かったのですが(笑) 、そのとき、たまたま「テックプラングランプリ」というものづくり限定のビジネスコンテストをネットで見つけて、応募したんです。たしか、参加者はみんな会社名の中、僕だけ個人名。しかも、発電データも無いし、単におもちゃみたいな模型が回るということだけでプレゼンしたんですが、情熱が認められて?優勝してしまった (笑) 。その時の審査員が浜野製作所の浜野社長。ここで初めて運命が繋がりました。その日の懇親会で、浜野社長が来られて「いまGarage Sumidaというインキュベーション施設をつくっている。あと数ヶ月でオープンするから、そこで会社を立ち上げて一緒に作らないか」って言ってくださったんです。

当時、どうやって会社をつくるかも分からなかったのに、会社を作る場所も、ものづくりを支援してくれるところも同時に見つかった。それで二つ返事でお願いして、Garage Sumidaの入居第一号企業として会社を設立しました。

■まさに運命の出会いですね。そしてGarage Sumidaの開発サポートが始まったと。

清水さん:
壮絶な開発が始まりました。当時は会社といっても2人しかおらず、風力発電機の開発経験もない。しかも、人生を賭けると決めた特許なのに、コンピューターシミュレーションしたところ、30%くらいあるだろうと計算していた発電効率が、0.1%ほどしかないことが分かったんです。10月に会社を立ち上げて、12月には地獄の底に落ちました。ここから効率を300倍にできるのかって話ですからね。当時、NEDO(研究開発型ベンチャーの事業化支援)の助成も受けていて、半年後に審査会があったので、それまでに成果を出せなければ、一周年も迎えられないまま会社が潰れるという状況だった。

そこから、まずは円筒が回るだけの装置を作って送風機で風を当てて、発電効率をどれだけ上げられるか、という試行錯誤が始まりました。当時はCADも買えなくて、ノートに手書きでスケッチを書いて浜野製作所にお願いをしていました。でもそれが1週間くらいで形になってくるんですよ、きちんとした試験装置として。しかも、しっかり改善されたものができている。今でも覚えていますけど、金岡さんが「これ、このままだと、ひっくりかえるよ。ここに足伸ばしといた」って言ったこと。僕としては、スケッチでは直立していても実物だとひっくりかえるんじゃないか、みたいな感覚や直感が無かったわけで、驚きましたね。

それで試験装置がひっくりかえることもなくスムーズに実験ができて、3ヶ月くらい粘ったある日、奇跡が起きて、一夜にして効率が300倍になったんです。たまたま試験中に回っている円筒に手を近づけたら、測っていたトルクのデータが、めちゃくちゃ揺れるのに気づいて。それがブレイクスルーになって、新しく特許を取ったんです。だから僕は、最悪の特許と最高の特許2つ持ってるんですよ(笑) 新しい特許は今では、世界20カ国以上で特許化されていて、風力発電のポテンシャルが大きい国のたぶん90%以上を押さえていると思います。

■今の特許技術の基盤を、浜野製作所のGarage Sumidaが支えたんですね。

清水さん:
はい。でもそれで終わりじゃないんです。その時はまだ円筒単体の試験装置でしかなくて、次はちゃんと風車の形を作って風洞実験をしなくてはならなかった。それも浜野製作所に二人三脚で作ってもらったんです。その時もドラマがありました。実験開始予定まで1ヶ月も無かったのですが、設計を進めていったら、ベルト駆動に必要なプーリーの納期が2ヶ月くらいかかることが分かった。その時点でもう間に合わないと思いパニックになったんですが、金岡さんが「自分たちで作ればいい」って言ってくれて、結果的にその部品が一番早くできてしまった。それで予定通り風洞実験することができました。

そのあとも、2016年に初めて、3mほどの大きさの実証機を作って自然環境で試験することになったのですが、やはり試験開始まで3ヶ月しかないという状況でした。それまでの数倍の大きさの構造物をつくることになったわけですが、大きな部品をどうやって作れば良いかわからなかった。結局、浜野製作所が全部を手配してくれました。例えば、アームはパイプを曲げて作ることが必要で、どこでどうやれば作れるのかわからなかったのですが、「じゃあパイプを曲げるのはあそこで作って、うちでここ溶接して、ここで焼き付け塗装して仕上げよう」とか全部やってくれた。毎週打ち合わせさせてもらって、尋常じゃないスピードで出来上がったんですよ。

いまでは、2018年に石垣島に建設した実証機の大きさが10mくらいになっているんですけど、その部品も作ってもらっています。風車のアームや円筒はかなり大きいので別なんですけど、小さな部品はいまだに「made in 浜野製作所」です。この実証機は頻繁に改良しているので、早急に部材を作らないといけない場面が多いんですが、このあいだも浜野製作所に相談したら、たった数日で完成して1週間も経たずに石垣島に届いたんですよ。それが癖になっちゃって、たまに別のところに同じ感覚で頼むと怒られますね (笑)

■浜野製作所としては、創業から見ていたチャレナジーだからこそ、特別な対応なのですか?

金岡さん:
他の仕事でも普段から短納期ってのはよくあるんで、清水くんのところだから特別っていうわけではないんですけど。ただ、最初から絡んでるじゃないですか。まぁ、そこらへんは人情的に、ちょっと優先してってのはありますけどね。

■作れないものは、やはり墨田区の他の工場と連携するんですか?

金岡さん:
工作機械がないですからね。分野が違う作りになってしまうと仲間うちに頼みます。それも「明日ね!」って (笑)

清水さん:
今でも覚えていますけど、ピザの宅配みたいなバイクで部品が届いたときには、感動しました。「午前中に頼んだのが夕方に来た!」って。

金岡さん:
その部品を作ってるところのバイクね。ここから近いんですよ。その加工屋の親方と僕と清水くんと他のメンバーでいろいろと機械を組んでるんですけど、例えば「ここが当たって組めねぇ」となると、その子分が取りに来て、自分とこ持って帰って、機械でいじって、また持ってきてそれで組んだり。お互い顔を合わせて作ってるからこそのスピードですよね。逆にそこがなければ、もの作りなんてできないですよ。「どんなに金積まれても嫌なやつのは手を貸したくない」ということもあるし。やっぱり人となりですよね。

■では、お仕事の話から離れて生活の話に。生活圏で、人情を感じたエピソードありますか?

清水さん:
ありますよ、ちなみに金岡さんと僕は同じ家に住んでいましたから。浜野社長が昔住んでたマンションを起業家向けにちょっと貸し出していただいていて。なぜか夜な夜な酔っ払った金岡さんも帰ってくるという (笑)

下町的なところでいうと、僕は独り身で夜遅くまで仕事するので、このあたりのお店で外食することが多いんですが、顔も覚えてもらっていて、アイスコーヒーをサービスしてくれたりする。で、マスターがずっと隣に座って世間話しながら食べたり。なんか家族と食卓を囲んでいるような、包んでくれる感覚はありますね。行きつけの中華屋さんに行ったら、浜野製作所の皆さんがたまたま飲み会をやっていて、そのまま合流したり。

■今後の夢があれば教えてください。

清水さん:
まずは、風力発電機をちゃんと量産して、世界中で使ってもらうこと。そして最終的には世界中を水素社会にすることが目標なんです。僕らの風力発電機で作った電気で海水を電気分解して水素を作り、日本から世界中に供給したい。
日本がエネルギーを輸出するといったら、ひと昔前だったら笑われますけど、水素社会化というパラダイムシフトを起こせば、可能になるんです。日本は、風エネルギーと海水をたくさん持っているから、この2つを組み合わせると水素の一大産地になれる。日本って、水素を使う技術は世界トップクラスじゃないですか、燃料電池にせよ、 水素自動車にせよ。水素を運ぶ船だってもう研究が進んでいる。でも水素を作るところだけ抜け落ちていると思うんですよ。そこを僕らが補完できれば、日本は水素関連技術に加えて水素そのものでも世界をリードできる。エネルギー革命を日本から起こす、「水素立国」が、僕らの夢ですね。

金岡さん:
我々は、周りとの協力がなければお互いに成り立たないんですが、技術力を持っている小さな企業が、埋もれてしまっていたり、繋がっていない。だから、うちをハブとして繋げながら、新たな仕事をつくらなくてはいけないと思っています。いま、製造の大手が総崩れで、下請けもかなり打撃を受けている。だから大手に依存しない、製造とか商売の仕方を中小でやっていかなくてはならないんです。そこには、モデルケースとなり引っ張るところが必要で、うちがやっていければ、ついてくる人たちが繋がっていくと思います。そこがまた網の目のように全国に広がっていけば、日本の技術力とか底力はまだまだ世界で勝てると信じています。年数はかかるかもしれないですけど、方向としてはそっちに行きたいですね。

■墨田区でスタートアップに向いているのは、どんな人ですか?

金岡さん:
やっぱり、元気があって、パッションがある人。実際に持ってくる案件がまだ出来上がってなくても、やってみなきゃわかんないですから。特に若い子なんかは、ある意味でバカの方がいいです。おじさんたちはそういうのを面倒みるの、好きだから(笑)

清水さん:
墨田区には、いろんな要素が揃ってます。23区なのに古き良き昭和が残っていて、毎日銭湯で疲れを取れる。かと思えばスカイツリーがあり、大きな商業施設もあり、でも生活コストは比較的安い。特に便利だと思うのは、羽田も成田も一本で行けるところ。それに、休日はすごく静かで、路地を子供が駆け回っている。スタートアップは仕事のストレスが溜まりやすいですから、心地よい生活環境はどんな人にとっても大事だと思います。
スタートアップっていつかはタワーマンションみたいな夢見てやっている人も多いかもしれないですけど、目の前の現実があるじゃないですか。その点墨田区は、東京の中でも、生活コストが安く、交通の便もよくて、そして僕みたいにものづくりをしたい人にとっては、見渡した範囲で全部が作れちゃう、まさに全てがそろう場所。ものづくりのテーマパークみたい。浜野製作所的には「すみコンバレー」って言ってますよね (笑)

■最後に、これからスタートアップに挑戦する皆さんへメッセージを。

清水さん:
新しい挑戦をスタートする場所として、これ以上の場所はそうないと思います。最初の一歩を踏み出すときは、そのまま押上(墨田区)まで来てほしい(笑)。実際に僕らのオフィスもスカイツリーの近くのCOG(センターオブガレージ)にありますけど、夜に輝くスカイツリーを見上げると、人間は何でも作れるんだ、自分も頑張ろう!と元気が出ます。たまにはスカイツリーに登れば、世界獲ったるぞ!みたいな思いになりますよ。タワマンに住まなくてもね (笑)

金岡さん:
墨田に限らず、日本全体に向けて言いたいんですけど、今までの経済のパターンって結局は大手、でもそろそろ脱大手しようよと。自分たちでまず、小さなところから始める。でもそこにとどまらず、県や都、そして国という単位まで目指してほしいですね。視野を広く持ってほしいです。そのためのサポートは、我々の方でもできるので。ぜひ臆することなく、元気にチャレンジしてもらいたいです。

■ありがとうございました。

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